日本乳酸菌学会

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会長挨拶

新会長を拝命して


日本乳酸菌学会 会長
園元 謙二
九州大学

 この度、図らずも日本乳酸菌学会の会長に就任いたしました九州大学大学院農学研究院の園元謙二です。このような大任は予想だにしておらず、ただただ身の引き締まる思いが致します。
 さて、通算して25周年を迎えている本会は私に様々な“恩恵”を与えてくれました。特に、約20年前に酵素工学が専門であった私は、その後、第2の専門分野となった“乳酸菌研究”において多くの方と真摯に交流することができました。新規参入者が気軽に専門の方と出会い、触発を受ける雰囲気は他の学協会では味わえない貴重なものでした。些細なことかもしれませんが、学会とは何かを考えるよい機会になりました。2006年に副会長を退任後、しばらく役員から離れておりましたので、大変お世話になった本会をさらに発展させるためにどのような運営が望ましいか、最近4、5年間の学会誌掲載の理事会議事録などを中心に勉強を始め、私なりに今後2年間に取り組むべき重点項目、そして長期アクションプランと展望をまとめました。拙速とは思いますが、以下に紹介いたします。また、早速、新役員の方々にそれぞれご担当分野における本会の現状・課題の整理をお願いし、今後の方向性に関しての具体的なことについて議論を始めております。なお、誌面の都合上、各役員が作成された詳細な現状と課題、今後の計画(2年間)については別の機会に紹介したいと思います。
 
 
今期の重点項目(優先度の順)(2015年7月―2017年6月、2年間):
下記の項目を解決すべく具体的な2年間のロードマップを作成し、その進展などを定期的に点検・改訂する必要があります。
 
1.事務局の充実と円滑な学会運営:学会の安定的事務運営のため、事務局委託業務について確認・整理して、事務局の充実をめざします。また、組織を動かすのは人ですが、理事職は見返りのないボランティア活動です。お忙しい理事の負担軽減を見据えた組織をめざし、理事の方にも達成感と充実感を味わっていただき、かつ会員の皆様全員の共感を生むような円滑な学会運営を行いたいと思います。
 
2.学会のHPの充実:学会への関心をより高めるため、現状のHPを頻度高く更新し、魅力的な情報発信をする必要があります。また、アジア乳酸菌学会連合(AFSLAB)などと海外連携をさらに深め、本会の求心力の向上のためには、英語での情報発信は不可欠と思われます。“国際化”と単に言うのは簡単ですが、先ずは国内学会で国際化に成功している例を参照しながら具体的な施策を打ち出さないと意味はありません。そのためには、誰がどのように主体的に行うか検討しなければなりません。人員・財政など複数の視点で検討します。
 
3.学会の新陳代謝:細胞の新陳代謝は生命維持に不可欠です。本会は成熟期を迎えていますが、創設時に活躍された方々が第一線を離れる時期ともなっています。現在、多くの学会がガラパゴス化、サロン化して衰退し始めています。本会もその兆候が垣間見られます。たとえば懇親会の場において、初めて参加された方(非会員でも)を以前のように温かく迎えているでしょうか?仲間内の会話は楽しいでしょうが、本会の初期のような“よく参加してくれたね。どんな興味があるの?”などと積極的に声をかけているでしょうか?シニアの大切な”レガシー”を受け継ぎ、本会をさらに発展させるためには、若手の人材育成だけでなく、シニアを“学会の耆宿”として活躍していただく場を提供したいと思います。たとえば、現役を退職後、まだ学会で一働きしても良いとお考えのシニアをフェローとして迎え、若い研究者との交流を促し、かつ学会実務の円滑な運営にも協力願って現役の理事などの負担を軽減することも可能と思われます。シニア・ミドル・ジュニアの各世代が手を取り合って学会の新陳代謝を図る施策を行いたいと思います(若い世代の働き手の割合が2007年ごろから減っており、今後はこの減少率がさらに高まる見通し。中でも15-29歳の若手はこの10年間で約25%減少。2030年には日本の人口の3割以上が65歳以上の高齢者となる見込み。会員数の増加を各学会が試みていますが、全く成功していません。なぜなのか?)。
 
 
長期アクションプランと展望:
1.学会のプレゼンス・アピアランス:乳酸菌研究の変遷に伴う「本会の立ち位置の明確化」と「関連他学会等との連携」のバランスをどう取るか?アイデンティティーをどう保つか?他学協会にはできない本会独自の企画などが考えられるか?あるいは、学協会の組織再編の動きを起こすか?たとえば、”健康・環境微生物学会”として、Bioscience of Microbiota, Food and Health(BMFH)の3学会や微生物生態学関連の学協会の組織改編など。さらには、中小の学協会は事務局の設置など学会運営に苦労しているが、合同の事務局を提案するか?また、英文誌として2012年に創刊されたBMFHの認知度を高めるために様々な施策を行ってきているが、たとえImpact Factor を取得したとしても実はその後が本当の正念場であることを何人がわかっているか?
 
2.年代・職種が異なる会員間の交流促進:若手とベテランの融合や民間と大学の連携を促進するような企画についてもさらなる魅力的施策を検討する。現在の「泊まり込みセミナー」をさらに発展させ(このセミナーで行われているワークショップをさらに発展させる)、寺子屋形式の交流と”レガシー”の伝達ができる場を提供する。「泊まり込みセミナー」の未経験者は一度ぜひ参加して実感してほしい。
 
3.地域社会への貢献:本会が社会貢献を果たす学会であることを周知・宣伝するために、市民が親しみやすい学会企画(乳酸菌研究についての説明責任とその情報公開)、地方の活性化への貢献(地域興し)、中小企業が気軽に参加できる雰囲気作りなどを行っていく。また、他学会とも積極的に連携する。
 
4.女性会員の活躍:本会は女性会員の比率が高い。女性の役員・委員を増やすだけに止まらず、女性会員のネットワーク作りを助け(OG会の創設など)、学会内外での活躍の場をバックアップする。
 
5.乳酸菌研究の戦略的な牽引:日本の乳酸菌研究は世界的に見ても多様で進展しているが、その方向性の提示や戦略的な国家予算の確保など、本会として取り組む。また、多様であるが、厚くない研究者層をどのように改善するかにも注力する。アジア(AFSLAB)や世界においても連携をさらに深め、かつ主導していく。
 
 
最後に一言。学会は会員の皆様のための組織です。他学会に比べ、本会の最も良い点は、本会に興味を持って参加した異分野からの“初心者”が気軽に交流ができ、その後、互いに触発され、その結果、本会が発展してきたことだったと思います。本会の会員になってよかった、長年、会員でよかったという満足度の向上は執行部として忘れてはならないことです。一方、学会組織を運営する際には、上記のような課題に直面します。私たち執行部はこれらのバランスを取りながら、会員の皆様が気宇壮大な夢を描けるような学会運営を心がけていく所存です。会員の皆様のご協力をお願い申し上げますと共に、忌憚のないご意見ご助言をお願い申し上げます。

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